蔡英文総統は14日午前、新竹市(台湾北部)にある財団法人国家実験研究院国家太空中心(NSPO=国家宇宙センター)を視察した。蔡総統はまずミッションコントロールセンター(MCC)で、さまざまなミッションを担う衛星と、それを支える地上アンテナの操作のデモンストレーションを参観したあと、NSPOの呉宗信主任から「我が国の航空宇宙計画発展の現状と展望」と題するブリーフィングを聴取した。
蔡総統は、「宇宙探索や未知への挑戦は、人類にとって長い間大きな夢だった」とした上で、宇宙産業の発展と、全く新たな宇宙時代への参入において台湾の不在はありえず、これは自分が総統に就任して以来、目標に掲げてきた重要な政策の一つでもあると強調した。
蔡総統はまた、近年、地球観測衛星「フォルモサット5号(中国語の名称は福爾摩沙衛星五号、略称は福衛五号)」から気象衛星「フォルモサット7号」(FORMOSAT-7、中国語の名称は福爾摩沙衛星七号、略称は福衛7号)に至るまで、台湾は徐々に衛星の自主開発能力を強化していると指摘。世界で初めてブラックホールの撮影に成功した国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」や、米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「パーサヴィアランス(Perseverance)」の設計・操縦などでも、台湾の人材が至るところで活躍していると述べた。
蔡総統はこうしたことを踏まえ、「台湾はグローバルな宇宙市場や宇宙産業に参入するだけの能力を十分に備えている」と強調し、宇宙産業は自分が第2期政権の経済発展の柱として掲げる「六大核心戦略産業」の一つ「国防及び戦略産業」を支える重要な項目だと説明した。また、このため第三期「太空科技長程発展計画(=航空宇宙計画)」では2019年から2028年までの10年間で、宇宙開発に計251億台湾元(約996億日本円)を投入する予定で、その法的根拠として、呉政忠部長(=大臣)が率いる科技部(日本の文科省に類似)が9か月の歳月を費やして作成した「太空発展法(=宇宙開発法)」が今年5月31日に可決・成立していると説明。予算及び法制面での支持を得て、台湾の宇宙開発を支える各方面の熱量は、より完全なものになっていると述べた。
蔡総統はさらに、「航空宇宙技術の発展は、政府による全方位的な政策や戦略の青写真、それにかける決意が必要だが、それと同時に優秀な人材が一緒になってこの領域に参入することが必要不可欠だ」とした上で、今年8月にNSPO主任に就任した呉宗信氏は非常に熱血漢で、且つ行動力を持った人物であると称えた。蔡総統はまた、「火箭阿伯(=ロケットおじさん)」と呼ばれる呉宗信主任が、困難を恐れず、国産ロケット開発にゼロから取り組んだ物語は、多くの台湾人を深く感動させたと述べた。蔡総統はそして、「呉主任が学術界や産業界で蓄積してきた豊富な経験と、非常に『頑固』な熱意と決意は、台湾の航空宇宙技術の発展のためにより多くの刺激をもたらしてくれるだろう」と期待を寄せた。
*「頑固」という表現は、台湾の人気バンド「五月天(メイデイ)」が2016年に発表した楽曲『頑固(Tough)』にちなむ。「五月天」はこの楽曲のミュージッククリップで、当時国立交通大学の教授だった呉宗信氏(現在のNSPO主任)の実話をモデルに、少年の頃の夢を諦めずにロケット作りに取り組む中年男性の物語を描いた。